エジプトの世界遺産
世界遺産とは、社団法人ユネスコ協会連盟の審査によって、一定の基準を超えた人口建築物、もしくは自然遺産等をさします。これらはユネスコによって世界遺産に認められたこととされ、今後は様々な形で現状の保持、遺産の維持等の活動対象とされます。
ユネスコというのはUnited Nations Educational,Scientific and Cultural Organizationの略称で、国際連合教育科学文化機関という意味になります。ユネスコは第2次世界大戦が終わった後に、人類が二度と同じ過ちを犯さないために。という願いをこめて設立されてきました。
エジプトでのユネスコの活動は、大規模なものであり、遺跡そのものの移築作業などが主だった活動となりました。アスワンハイダムによって湖底に沈もうとしていたアブシンベル大神殿の移築や、ナイル川に沈んでいたフィラエのイシス神殿を別の島に移し変えるなど「史上最大の作戦」とまで呼ばれるような大事業を成し遂げました。
こうしたユネスコの世界遺産を守り、人類の歴史、地球の恩恵を尊重する活動によって現在のエジプトの観光地や、遺産が保持されてきました。
上の写真は有名なルクソール神殿です。コチラは単体での世界遺産登録はされていないものの、古代都市テーベとその周辺の墓地遺跡。ということで、世界遺産に登録され保護されています。日本人にも有名で、観光客の殆どが訪れるであろうこうした遺跡も、ユネスコの手によって保護されています。
このテーベ周辺地域というのは、ナイル川を挟んで東側の地域、正者の都と呼ばれている都市部分とカルナック神殿、ルクソール神殿などが含まれ、ナイル川を渡り西側の死者の町と呼ばれている王家の谷等のネクロポリスが世界遺産として登録されています。
エジプトに関しては、世界遺産に登録されている7つの遺産のうちの5つが1979年という早い段階で世界遺産に登録され、それ以来遺跡の保全保護が続けられてきました。中でも古代エジプトの聖地、巡礼地とされていたアブ・メナの遺跡は危機遺産として指定されており、今後の存続が危ぶまれているひとつです。
エジプトの世界遺産
エジプト内には世界遺産が幅広く存在しています。ピラミッド単体などそれぞれが世界遺産には登録されていないため、主には~の地区が世界遺産に登録されているという状況です。
エジプトの世界遺産は全部で7つ存在しています。
メンフィスとその墓地遺跡 ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯 |
文化遺産 / 1979 | |
古代都市テーベとその墓地遺跡 | 文化遺産 / 1979 | |
アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群 | 文化遺産 / 1979 | |
イスラーム都市カイロ | 文化遺産 / 1979 | |
アブ・メナ | 文化遺産 / 1979 | 危機遺産 |
聖カトリーナ修道院地域 | 文化遺産 / 2002 | |
ワディ・エル‐ヒータン(クジラの谷) | 自然遺産 / 2005 |
これら7つの遺跡が、エジプトにおける世界遺産となっています。特に注目したいのは危機遺産として登録されている、アブ・メナの遺跡と、アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群の2つです。
アブ・メナに関しては、現在修道院がありますが、それ以外に教会や礼拝堂などがあったアブ・メナ遺跡などもあり、そちらのほうが危機遺産となっています。教会や礼拝堂などができて大きく栄えたのですが、度重なる地震と相次ぐイスラム教の信仰により衰退して、それから1959年までその地は荒廃していましたが、当時の大司教キュリロス6世によって修道院が建設され、再建されました。しかし、残る古代の遺跡群はすでに遺跡としての形をとどめておらず、折れた柱や建築物の区画のあとが無残にも放置されている状態として残っています。
また、アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群は、アスワンハイダムの建設に伴って水没するところを、ユネスコによって救済され、遺跡そのものの様式、方位を変更せずに移築されました。コレによって、水没するところのアブシンベル大神殿、小神殿やフィラエのイシス島等は修復、移築されて現在も多くの観光客などに見られるようになりました。
世界遺産の所在位置
エジプトにある7つの世界遺産群は左図のように配置されています。下エジプトのデルタ地帯に存在する、エジプトの首都であり、イスラム都市のカイロ。そこからナイル川を渡るとすぐ側に広がるギザの3大ピラミッドを代表とするギザからダハシュールまでのピラミッド地帯。そこからさらに砂漠を西に行くと、ワディ・エル-ヒータンという、あまり聞かない名前の場所があります。そこはクジラの谷と呼ばれ、古代のクジラなどの化石が見つかりました。地中海方面に向かうとコプト教の聖地、アブメナがあります。危機遺産として有名で、残された遺跡はもう風前の灯というところまできてしまっています。
ナイルをさかのぼって上エジプトに入ると、古代のエジプトの首都、百門の都と歌われた古代都市テーベ(現ルクソール)があります。ここのカルナック神殿や王家の谷を始めとする、遺跡、墓地群はすべて世界遺産として登録されています。さらに南下を進めるとフィラエのイシス神殿や、カラブシャ神殿。国境付近にはアブシンベル大神殿があります。これらはユネスコの手によって救済され、現在もその姿を日の下に輝かせています。
そして、あまりエジプトというと注目される頻度の少ないシナイ半島には、モーゼの出エジプトで有名なキリスト教の聖地、聖カトリーナ修道院があります。ここを含める周辺地域を合わせて世界遺産に登録されており、ナイル川沿いに展開しているほかの遺跡群とはまた違った風景や景観、生活観などを見ることができます。