エジプトの政治
政体:立憲共和制
議会:一院制(人民議会、454議席、任期5年)、他に諮問評議会(立法権は有さず)
内政:ムバラク大統領(1928年生まれ、76歳)は、1981年10月に暗殺されたサダト大統領の後を継いで、副大統領から大統領に就任した。以来、1999年9月の国民投票で第4期目の信任を得ており、2005年で就任24周年を迎える。人民議会議席の8割以上を占める与党国民民主党総裁でもあり政権の基盤は安定していると言われてきたが、最近、国内でムバラク政権の長期化等に対する批判が行われ、これに反対するデモ活動が頻繁に行われている。
米がイラク戦争後、「中東地域の改革」に焦点を当てた拡大中東構想を打ち上げ、地域の一部においては市民社会を中心として内部からの改革が試みられている。このような状況下、エジプトにおいては、ムバラク大統領のイニシアチブにより、大統領選挙の方法に関する憲法条項の改正(現在の「単一候補に対する国民の信任投票方式」から、「複数候補に対する直接選挙方式」への変更)が試みられるといった政治改革の動きが見られる。憲法改正案は、人民議会を通過し2005年5月末の国民投票により認められた。9月7日に大統領選挙が実施され、10人が立候補、ムバラク大統領が圧倒的多数の票を獲得し、ムバラク大統領が5選を果たした。
1999年10月に発足したオベイド内閣は、1991年に開始された市場経済化に向けた経済改革に取組んだが、大きな成果を上げるには至らなかった。2004年7月半ばには内閣改造が行われ、ナズィーフ前通信相を首相とする新内閣が誕生した。ナズィーフ内閣は、民間人を含む改革派の人材を登用するとともに、税制改革、金融改革、国営企業の民営化、投資誘致等の経済改革に精力的に取り組んでいる。
1997年のルクソール事件(エジプト南部の観光地ルクソールで日本人10名を含む62名がイスラム過激派に殺害された)以降、当局の厳しい取り締まりにより、国内のイスラム過激組織の活動はほぼ終息したと見られていたが、2004年10月にシナイ半島の保養地で連続爆破テロが発生した。また、2005年4月初旬にカイロの中心部で爆弾テロが発生し外国人観光客が死傷するとともに、同月末にもカイロ市内で外国人観光客を狙ったものと思われる2件の連続テロ事件が発生した。更に、7月末には、シナイ半島のリゾート地シャルム・エル・シェイクにおいて大規模な連続爆破テロ事件が発生した。